出生前診断とは、赤ちゃんが生まれる前に病気や異常があるかを調べる検査の総称です。
通常の妊婦健診の検査項目とは異なり、出生前診断でわかる検査項目は赤ちゃんの生命にかかわる難しい問題を含んでいます。そのため、ご夫婦又はパートナーとよく話し合っていただいてから検査を行う必要があります。
出生前診断には、染色体の数の変化などを確認できる確定検査と赤ちゃんの疾患の可能性を推定する非確定的検査があります。
非確定的検査 | 確定的検査 | ||||
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メリット | 母体への負担が少なく流産のリスクがない | 疾患の診断を確定できる | |||
デメリット | 疾患の可能性を評価することはできるが、確定検査ではないため診断確定のために確定検査を受ける必要がある | 母体への負担があり、わずかではあるが破水、感染、流産のリスクがある | |||
検査名 | 超音波検査 (胎児後頚部浮腫の測定) | 母体血清マーカー検査 (クアトロテスト) | 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT) | 羊水検査 | 絨毛検査 当院では絨毛検査は行っておりません。 |
検査方法 | 経腟による超音波検査 | 採血 | 採血 | 腹部に針を刺し羊水を吸引する | 腹部に針を刺して、あるいは子宮頸部にカテーテルを挿入して、絨毛を採取する。 |
実施時間 | 11~13週 | 15週頃 | 10~17週 | 15~18週 | |
結果報告までの期間 | 2週間程度 | 2週間程度 | 3週間程度 | ||
対象となる先天性疾患 | 18,21トリソミー | 13,18,21トリソミー、二分脊椎 | 13,18,21トリソミー | 全ての染色体疾患 |
妊娠11~13週の期間に胎児の首(の後ろ)のむくみを超音波で測ることができます。首の後ろのむくみのことをnuchal translucency(NT)と呼びます。正常でもむくみはありますが、NTが厚いと染色体異常の確率が高くなるといわれています。また、NTが肥厚している症例では染色体異常が無くても心臓などの形態異常のリスクも高くなります。
NTは非確定的検査で、実際に染色体異常を調べるためには羊水検査など確定検査が必要です。NTでハイリスクと考えられる心臓などの形態異常についても、妊娠中に超音波で検査することができます。一方でNTが肥厚していても明らかな異常がなく生まれてくる赤ちゃんもいます。
NTの検査を受けるかどうか、NT肥厚があり追加で検査を希望するかどうか、ご夫婦又はパートナーと話し合って決める必要があります。
当科では、妊娠中の超音波検査でわかることについてどの程度知りたいか、意思確認をしています。
NTは、11~13週の健診時に偶発的に発見されることもありますが、その時は事前に行っている意思確認のご希望に合わせて説明させて頂きます。
また、赤ちゃんの成長に不安がある方は、遺伝カウンセリングも受けることができます。
妊娠中、赤ちゃんの胎盤で作られるタンパク質は妊婦さんの血流に入ります。クアトロテストは血液中に含まれる赤ちゃんや胎盤由来の4つのタンパク質を解析します。それにより、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、開放性二分脊椎症の可能性を調べることができます。
検査結果は、母体年齢固有の確率に加えて、妊娠週数、妊婦さんの体重、家族歴、Ⅰ型糖尿病の有無など、様々な情報を考慮して、赤ちゃんに疾患があるかどうか、妊婦さん一人ひとりの確率を出します。
検査結果は確率で表示されるため、ご夫婦としての結果の捉え方が重要です。
クアトロテストは羊水検査を受けるかどうかをご夫婦又はパートナーと判断するための一つの情報として考えてください。
当科で検査をご希望される方には15週頃の検査をお勧めしています。通常の妊婦健診で対応しますのでご相談ください。
料金:19,500円(非課税)
NIPTは母体の血液検査で胎児がダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーに罹患している可能性を推定するもので、クアトロテストよりも感度が高い検査です。検査をするためには適応条件を満たしていることが必要となります。
検査前に遺伝カウンセリングをご夫婦又はパートナーで受けて頂き、血液検査の予定を組みます。血液検査の結果がでたら再度ご夫婦又はパートナーで遺伝カウンセリングを受けて頂きます。
結果は陽性・陰性・判定保留の3パターンです。陽性になった場合は、確定検査(羊水検査)を行う必要があります。羊水検査を行う場合は、入院が必要となります。判定保留の場合は、再度採血するか確定検査(羊水検査)をするか選択されます。
当科では遺伝カウンセリング外来を設けており、完全予約制で検査を行います。他院かかりつけの場合も検査をすることができます。検査受診ご希望の場合は、紹介状をお持ちください。
当院は、日本医学会よりNIPTの認定を受けた施設であり、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施しております。
*当院形式の情報診療提供書(紹介状)がホームページにあります。ダウンロードできますのでそちらもご活用ください。
適応条件:NIPT実施においては「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」(日本産科婦人科学会)に基づき、下記の条件を一つ以上満たす必要があります。
羊水検査は妊娠15週~18週に行われます。お腹から超音波検査を行い、胎盤・胎児・臍帯の位置を確認し羊水の多い場所に針を刺して羊水を採取します。この検査でわかるのは染色体異常だけで全ての異常が発見できるわけではありません。
羊水検査の合併症として、破水・出血・子宮内感染・流産・早産・胎児死亡・胎児母体の損傷・羊水塞栓症などがあり、妊娠15~16週に検査を施行した場合、流産リスクは1/300程度と言われています。
検査のご希望は妊婦健診で対応いたしますが、検査後のことも含めてご夫婦又はパートナーでよく話し合って決めていただくのが望ましいです。
検査は1泊入院が必要で翌日まで経過観察し問題がなければ退院となります。入院費は検査料含めて約8万円です。個室利用時には別途室料差額が生じます。
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